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自筆証書遺言の書き方を徹底解説

遺言書にも種類があります。中でも自筆証書遺言なら、お金をかけずに誰でも自宅で作成することができます。

相続争いはお金持ちに限って起こることではありません。賢く自筆証書遺言を利用して、相続トラブルを防ぎましょう。

今回は、自筆証書遺言の書き方について詳しく解説します。

1 自筆証書遺言を作成するための流れ

自筆証書遺言を作成するために、次の流れを把握しておきましょう。きちんと順を踏んで作成することは、完成度の高い自筆証書遺言に繋がります。

  1. ご自分の財産を把握する
  2. 相続人の把握と遺留分の確認
  3. 遺言内容を決める
  4. 作成に必要なものを準備する
  5. 自筆証書遺言を作成する
  6. 自筆証書遺言を保管する

2 自分の所有する財産を把握し遺言内容を決める

まずは自筆証書遺言の大元になる部分について、確認をし、自筆証書遺言の作成に備えます。

2-1.財産を把握する

まずはご自分の財産をすべて把握することから、自筆証書遺言の作成は始まります。

預貯金はすべて記帳をして確認し、不動産は固定資産評価証明書を取得すると良いでしょう。その他にも有価証券や車など1つずつ確認してください。

2-2.相続人の範囲と遺留分を確認する

ご自分の相続人は誰になるのか、また、相続人それぞれの遺留分の割合を確認します。

ご家族に当たる人たちであるため、すぐに分かることが多いかと思いますが、万全を期すために戸籍謄本を取って確認すると安心です。

2-3.自筆証書遺言の内容を決める

誰にどの財産をどれだけ渡したいのかを決めます。遺言の根幹になる部分ですので、慎重に決めてください。

ご自身の気持ちが最も大切ではありますが、押し付ける形になっても相続トラブルの原因となってしまいます。遺留分への配慮はもちろんのこと、相続する人の気持ち、他の相続人の気持ちも考えながら決めると良いかと思います。

【関連記事】遺留分侵害額請求と民法改正

3.自筆証書遺言に必要なものを準備

自筆証書遺言はその名称通り、遺言者自身の手書きで作成する遺言書になります。必要な道具は、紙とペンです。

3-1.自筆証書遺言に使用する用紙

自筆証書遺言の用紙に法律上の規定はありません。裁判所に専用の用紙が売っているわけではなく、ペンで文字を書ける紙であれば何でも大丈夫です。極端な話をすると、ノートを破った切れ端や、広告の裏でも遺言書の効果に変わりはありません。

ただし、破れやすい用紙は偽造や変造予防のために避けた方が良く、長期保存に耐えられないようなペラペラの紙も、避けたほうが良いでしょう。

3-2.自筆証書遺言に使用する筆記用具

筆記用具についても法律上、特に規定はありませんので、ボールペン、マジック、毛筆、万年筆など自由に選んでください。色についても自由です。

ただし、鉛筆やシャープペンシルは簡単に偽造や変造ができてしまうため、避けた方が良いでしょう。また、遺言書の途中で筆記用具の種類や色を変えてしまうと、書き足したのではないかと疑われる可能性があります。最初から最後まで同じ筆記用具を使ったほうが良いでしょう。

4.自筆証書遺言を作成する

遺言の内容、紙とペンが揃ったら、いよいよ自筆証書遺言を書くことになります。

自筆証書遺言には、法律上のルールがあります。法律上のルールに従わなければ、無効になってしまう可能性もあります。

4-1.必ず全文を手書きする

自筆証書遺言は、遺言者本人が全文を手書きで作成します。代筆やパソコンで作成すると、無効になってしまいます。

ただし、財産目録については、パソコンでの作成が認められており、また、登記簿謄本などの資料添付によって代えることもできます。

4-2.日付を明記する

遺言書を作成した年月日の記載は必須になります。「令和〇年〇月〇日」と記載してください。

日付の記載がない場合や、手書きではなく日付印を押している場合や、「令和〇年〇月吉日」と記載している場合などには、その遺言書は無効になります。

遺言書が何通も発見された場合には最新の日付のものが有効となるため、遺言書の日付は重要なのです。

4-3.署名・押印する

自筆による署名と、押印も自筆証書遺言には必須です。署名と押印がない自筆証書遺言は無効となります。

ただし、署名は本名の氏名以外にも、ペンネームや芸名でも問題ありません。その遺言書を書いた人が、間違いなく本人であるということが認識できれば良いのです。

押印は実印、認印どちらでも問題ありませんが、認印は誰にでも作れてしまうため、実印を使用した方がトラブル防止になります。

4-4.訂正や加入、削除は法律に則った方法で行う

遺言書に訂正や加入、削除箇所があると偽造変造と見分けが付かなくなってしまうため、遺言書の訂正・加入・削除方法には厳密なルールが定められています。ペンで塗り潰したり、修正ペンを使ってはいけません。

ルールに則った適切な訂正をしなければ、訂正の効果が無効となってしまう可能性があります。

訂正

  • 訂正したい箇所に二重線を引きます。
  • 正しい文言を、横書きの場合には、訂正箇所の上に、縦書きの場合には、訂正箇所の右に書きます。
  • 二重線の近くに訂正印を押します。(遺言書の署名押印に使用した印鑑と同じもの)
  • 訂正箇所の余白部分、または遺言書の末尾に、どのような訂正をしたのかを書き、署名します。
    (例:5行目の長男を次男に訂正した。相続花子)

加入

  • 加入したい箇所に吹き出しを書きます。
  • 加入したい文言を吹き出しの中に書きます。
  • 吹き出しの近くに訂正印を押します。(遺言書の署名押印に使用した印鑑と同じもの)
  • 加入箇所の余白部分、または遺言書の末尾に、どのような加入をしたのかを書き、署名します。
    (例:12行目に「普通預金」の4文字を加入した。相続花子)

削除

  • 削除したい箇所に二重線を引きます。
  • 二重線の近くに訂正印を押します。(遺言書の署名押印に使用した印鑑と同じもの)
  • 削除箇所の余白部分、または遺言書の末尾に、どのような削除をしたのかを書き、署名します。
    (例:20行目を全文削除した。相続花子)

4-5.遺言書を封入する

遺言書は、封入しなければならないという法律の規定はありません。

しかし、封筒に入っていない遺言書は、万が一、他人に見られたとしても、その証拠が残らず、偽造・変造される可能性があります。

偽造・変造を防止するため、また、相続人間のトラブルを防止するためにも、中身が見えない封筒に入れて、遺言書に押印した印鑑で封印をしてください。

4-6.自筆証書遺言のひな形

自筆証書遺言には、法律上のルールがあります。ルールを1つ満たさないだけで、遺言書自体が無効になってしまうこともあり得ます。

無効にならない自筆証書遺言を作成するためにも、ネットなどに載っているひな型を上手に活用することをおすすめします。ご自分の遺言内容を、ひな形に当てはめて作成することで、必要な内容を網羅することができます。

1 不動産は確実に特定できるように、登記簿謄本に記載されている情報を写します。

2 付言事項とは、家族への感謝の気持ちや、遺言内容の動機など、自身の気持ちを家族へ伝えるために記載する事項です。法的効力はありませんが、遺言者からの最後の手紙は、遺族の心を打ち、相続トラブルを未然に防ぐ効果があります。

5.自筆証書遺言を保管する

自筆証書遺言が完成したら、それを適切な場所に保管場所する必要があります。

適切な保管場所を見つけることが、意外に難しく、死後すぐに分かるようにと、目立つ場所に保管すると、生前に遺言書を見られてしまう可能性があります。かといって、わかり難い場所にしまい込んでしまうと、遺言書が発見されないかもしれません。

どの方法にもメリットデメリットはあります。ご自分に最も適した保管方法を選択してください。

5-1.ご自分での保管方法

ご自宅の中で、ご自分しか触らないような場所、例えば、書斎の引き出しや、鞄のポケットなどに入れておけば、遺言者が亡くなった後であっても、相続人に開けてもらえる機会はあるはずです。また、銀行の貸金庫に保管しておく方法も考えられます。

ご自分で保管するメリットは、手間と費用がかからない点、デメリットは発見されない可能性があるという点です。

5-2.法務局での保管制度の利用

自筆証書遺言を法務局で保管してもらうことができる、20207月にスタートした比較的新しい制度です。

法務局での保管のメリットは、なんといっても偽造変造を確実に防止することができることでしょう。また、保管する際に、形式上の要件を満たしているかを確認してもらえるます。また、自筆証書遺言に必要な、検認手続きも不要なとなります。

デメリットには、保管手続きに1,900円の手数料がかかる点、法務局に保管した旨を家族の誰かに伝えていないと、相続人が遺言書の存在に気が付かない可能性がある点、形式的な要件しか確認されないため、法的有効性が確保されているわけではないといった点が挙げられます。

しかし、この内容で1,900円というのは格安なのではないかと思います。次に、発見されない可能性については、法務局への保管を家族に伝えておきさえすれば良い話になります。

最後に、法的有効性については法務局に頼るのではなく、出来上がった自筆証書遺言を一度専門家に見てもらうと良いかと思います。

これらのデメリットは容易に解消できることであり、法務協での保管はおすすめの方法です。

5-3.専門家に預ける保管方法

弁護士や司法書士などの専門家に、保管を任せることも考えられます。

メリットには、偽造・変造の防止が挙げられます。

他方、デメリットは、専門家に対する報酬がかかる点、家族に専門家が遺言書を保管していることを伝えていなければ発見されない可能性がある点です。

その他にも、個人事務所の場合は、専門家が先に死亡してしまうことで、遺言書が行方不明になる可能性があることが挙げられます。

5-4.自筆証書遺言の保管方法まとめ

簡単に、保管方法についてのメリット・デメリットをまとめておきます。

保管方法 メリット デメリット
ご自分での保管
  • 手間がかからない
  • 費用がかからない
  • 相続が開始しても発見されない可能性
法務局での保管制度
  • 偽造・変造の心配がない
  • 形式上の要件を確認してもらえる
  • 検認手続きが不要
  • 費用がかかる
  • 法的有効性は確認してもらえない
  • 相続人に保管制度の利用を伝えておかなければ、相続人に発見されない可能性
専門家による保管
  • 偽造・変造の心配がない
  • 専門家に対する報酬が発生する
  • 個人事務所では、専門家が遺言者が先に亡くなってしまうと、遺言書が行方不明になる可能性
  • 専門家に遺言書を預けている旨を伝えておかなければ、相続人に発見されない可能性

6.自筆証書遺言作成上の注意点

最後に、自筆証書遺言の注意点をご紹介します。

6-1.共同遺言は無効になる

共同遺言とは、2人以上で同じ遺言書を作成することをいいます。赤の他人同士が共同遺言をすることは考え難いかもしれませんが、共同遺言を作成しようと考えるご夫婦はいらっしゃいます。

しかし、遺言とは、人が死亡後に法律上の効力を生じさせる目的で行う単独の意思表示のことであり、撤回したいと思った時には、いつでも自由に撤回することができます。

一方で、共同遺言では、ご自分の意思だけで撤回することが難しくなってしまうため、共同遺言の作成は、「民法975条共同遺言の禁止」によってはっきりと禁止されています。

6-2.遺言執行者について

遺言執行者とは、遺言内容を確実に実行するために必要な手続きを行う人です。

遺言によって相続人以外の人に遺贈したい場合や、相続人の廃除をしてもらう場合には、遺言執行者を指定しておくと安心です。

遺言執行者は未成年者と破産者以外であれば、誰でもなることができますが、公平な立場から確実に業務を遂行してもらわなければなりません。したがって、弁護士などの専門家に依頼されることをおすすめします。

6-3.自筆証書遺言には検認が必要になる

自筆証書遺言はまず、家庭裁判所に提出し、相続人立会いのもとで開封、そして内容を確認する検認手続きが必要になります。

検認は、相続人全員に遺言書の存在をしらせるため、遺言書の内容を明確にすることで偽造変造を防止する目的で行われます。検認前に勝手に開封してしまった場合には、5万円以下の過料が課せられる可能性があります。

なお、前述の通り、法務局の保管制度を利用した場合には、自筆証書遺言であっても検認が不要になります。

6-4.遺留分に配慮する

遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人が最低限取得できる遺産の割合です。遺留分は、法律で守られている相続人の権利であり、遺言書よりも強い権利です。

例えば、妻と子が相続人であるにもかかわらず、妻に遺産すべてを相続させる旨の遺言を残した場合には、子は自分の遺留分を侵害している妻に対して遺留分侵害額請求を行い、自分の遺留分を取り戻す権利があります。

遺留分侵害額請求が行われると、請求される側にとっても負担になります。余計な争いを避けるためにも、遺言の時点で遺留分を考慮しておくことが必要です。

まとめ

自筆証書遺言は、誰でも費用をかけずに簡単に作成することができる遺言書です。

一方、自筆証書遺言は、遺言者がご自分で作成するだけで、法律の専門家の目が通していないため、遺言者が亡くなり、遺言書を確認すると、形式的要件や、法的有効性を満たしていないといった問題が発生する可能性が高くなります。また、保管方法も、遺言者の頭を悩ませる問題です(その点では、法務局での保管制度は、検討に値するでしょう)。

そこで、上原会計事務所では、公正証書遺言の作成サポートを行っております。ご興味のある方は、是非、ご相談ください。

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「あんしん相続」には、ご家族の協力、連携はもちろんですが、専門家のサポートも必要になってきます。

例えば、上記のような場合以外にも、下記のように税理士・弁護士・司法書士を含めた総合的なアドバイスが必要になるケースが少なくありません。

  • 遺言書の書き方がよくわからない
  • 遺産分割で揉めるのが不安
  • 遺言書の内容に納得がいかない
  • 相続手続きについてよくわからず困っている

弊所では税理士・社会保険労務士・行政書士・弁護士でUグループを形成しており、ワンストップで相続手続き全般についてご相談いただけます。

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