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保証債務や連帯債務は相続税の債務控除の対象になるのか

「保証債務」や「連帯保証」、「連帯債務」と、どれも馴染みのある言葉ではありますが、それぞれ性質が若干異なります。

被相続人がこれらを負っていた場合には、どれに該当するかによって相続税の債務控除の取り扱いも異なってきます。

今回は、これらの債務が、相続税の債務控除の対象になるかについて取り上げます。

1.保証債務と連帯債務

保証とは、債務者が返済をしない場合に、債務者に代わって保証人が返済の責任を負う義務のことをいいます。

子供の時、「借金の保証人にだけは絶対になってはいけない。」と親から教えられたことはなかったでしょうか?保証人になると、他人の借金を突然肩代わりしなくてはいけなくなってしまうことがあるからです。

保証には保証債務、連帯保証があり、また連帯保証とよく混同されるもので連帯債務があります。

それぞれどのようなものなのかご紹介いたします。

1-1.保証債務

債務者が返済できない債務を肩代わりすることを保証債務といいます。

例えば、債務者が5,000万円の銀行借入を返済せずに夜逃げをしてしまった場合、その保証人は銀行から5,000万円の返済請求を受けることになり、この5,000万円が保証債務に当たります。

保証人は債務者に代わって5,000万円を銀行に返済しなければなりませんが、返済すると5,000万円は債務者に請求することができます。これを求償権といいます。

また、保証人には、債権者から借金の請求をされた場合に、先に債務者に請求してほしいと主張できる「催告の抗弁権」と、債務者には返済能力があるにもかかわらず、債権者が保証人に返済を請求した場合には、先に債務者に請求するよう主張できる「検索の抗弁権」があります。

1-2.連帯保証

保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担することを連帯保証といいます。

主債務者が返済をしない場合に連帯保証人が肩代わりをしますので、基本的には求償権を含めて保証債務と同様です。

しかし連帯していますのでその分責任は強くなり、債務者が夜逃げをして連絡が取れないなどで債権者が主債務者を通り越して保証人に返済を請求してきた場合であっても、保証人はそれを拒むことができません(催告の抗弁権がない)。

また主債務者が返済できる状況にある場合でも、それを理由に保証人は返済を拒むことができません(検索の抗弁権がない)。

さらに、保証人が複数人いるときには、借金全額を頭数で割った金額を債権者に返済すれば足りますが、連帯保証人は、連帯債務1人ずつが借金全額を債権者に返済する義務を負います(分別の抗弁権がない)。

催告の抗弁権、検索の抗弁権、分別の抗弁権この3つがないことが、保証人と連帯保証人との大きな違いとなります。

1-3.連帯債務

1つの債務について複数の債務者が全額の返済義務を負うのが連帯債務です。

例えば、ABC9,000万円の銀行借り入れを連帯債務で起こしたとします。この3者は共同して9,000万円を返済していく義務があるため、銀行はいつでも誰にでも9.000万円全額の返済の請求をすることができます。

誰かが返済できなった場合には、3,000万円を限度として返済すれば良いのではなく、連帯債務者それぞれに9,000万円全額の返済義務があります。

保証債務や連帯保証では、主債務者が返済できなくなった場合に、保証人という立場で肩代わりをすることになる一方、連帯債務は債務者全員が債務者という同一の立場であることから、それぞれが全額の返済義務を負うのです。

2. 保証債務や連帯債務は相続税の債務控除の対象になるのか

相続税の計算で、相続財産から控除できる債務は、相続開始時点で存在し、かつ確実と認められる債務に限られています。それでは、保証債務や連帯債務は、債務控除の対象になるのでしょうか?

2-1.保証債務

原則:債務控除の対象にならない

保証債務は、主債務者に請求できることから保証人の債務になることが確実ではなく、保証人には求償権もあることから原則として債務控除の対象にはなりません。

例外:債務控除の対象となるケース

ただし、相続開始時点において主債務者が次のどちらの状況にも当てはまる場合には、被相続人の確定した債務であるとして債務控除の対象になります。

  • 主債務者が弁済不能な状態で保証人が債務の履行をしなければならない
  • 主債務者に求償権の行使をしても弁済を受ける見込みがない

この場合には、主債務者が弁済不能の額について債務控除の対象となります。

2-2.連帯保証

保証債務と同様の取り扱いになります。

催告・検索の抗弁権がない点から、保証債務よりも例外条件には当てはまり、債務控除の対象になるケースが多いかと思います。

2-3.連帯債務

連帯債務の場合には、次の2つのパータンで債務控除があります。

1.各連帯債務者の負担額が明らかになっている場合

被相続人の負担額を債務控除

2.被相続人以外の連帯債務者が弁済不能の状態にあり、かつ、求償しても弁済を受ける見込みがなく、弁済不能者の負担部分も負担しなければならない場合

被相続人が負担しなければならない部分の金額も債務控除

3.保証債務などがある場合の債務控除の具体例

これだけでは分かりにくいかと思いますので、具体例を使って債務控除の金額を計算してみます。

3-1.保証債務

【例】

友人Aが被相続人を保証人として事業資金1億円の借り入れを起こしたあと、相続開始日の直前に事業を失敗。友人Aは残った5,000万円の返済能力がないのはもちろんのこと、生活していく資金もないほどに困窮している場合

債務控除の例外要件に該当すると考えられますので、被相続人が背負うことになる5,000万円の借入金は債務控除の対象になります。

3-2.連帯保証

【例】

親族Bを主たる債務者、被相続人を連帯保証人として3,000万円の借り入れをしたあと、親族B1円も返済しなかったため、被相続人に返済の請求があった場合

親族Bの財産状況は不明とします。

親族Bが返済できる状況であるならば、支払いを拒否したい状況ではありますが、連帯保証ですので、実は親族Bに返済能力があったとしても借入先からの請求を拒否することはできません。

被相続人は3,000万円の返済義務を追いますので、債務控除の対象になります。

3-3.連帯債務

【例1】

8,000万円を友人CDEと被相続人の4人の連帯債務で借り入れ、それぞれの負担額を2,000万円と取り決めていた場合

各連帯債務者の負担額が明らかになっている場合に該当し、被相続人が負担すべき2,000万円は債務控除の対象になります。

【例2】

1の状況で、更に友人Cが夜逃げをして音信不通となってしまい、友人C2,000万円も被相続人が負担している場合

被相続人が元々負担すべきであった2,000万円と、友人Cの分2,000万円の計4,000万円が債務控除の対象になります。

保証債務や連帯債務についてのよくある質問

そもそも保証債務や連帯債務は相続の対象になるの?

相続人は、被相続人の一身専属権以外の権利義務を、相続開始時から承継することになります(民法896条)。

そこで、保証債務や連帯債務が、被相続人の一身専属権以外の義務に該当するかどうかが問題となります。結論から申し上げますと、保証債務や連帯保証、連帯債務は、原則として、相続の対象となります。

保証債務や連帯債務などを相続してしまいお困りの方は、弁護士などの専門家にご相談ください。

保証や連帯債務って相続税の申告で債務控除されるの?

では、ここまでをまとめておきましょう。

保証債務・連帯保証については、原則として、債務控除の対象となりません。債務控除の対象とるのは、次のいずれにも該当する場合です。

保証債務・連帯保証

・主債務者が弁済不能な状態で保証人が債務の履行をしなければならない場合
・主債務者に求償権の行使をしても弁済を受ける見込みがない場合

これら2つの条件を満たす場合には、主債務者の弁済不能額を債務控除することができます。

一方、連帯債務では、次の2つのケースが、債務控除の対象です。

連帯債務

被相続人の負担部分が明らかな場合:被相続人の負担額を控除可
被相続人以外の連帯債務者が弁済不能の状態にあり、かつ、求償しても弁済を受ける見込みがなく、弁済不能者の負担部分も負担しなければならない場合:被相続人が負担しなければならない部分の金額を控除可

まとめ

保証債務や連帯債務は額が大きいことが多く、債務控除できるか否かは相続税に大きく影響します。税理士の判断を受けることをおすすめいたします。

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