公開日:2020.07.31

遺贈にかかる相続税の基礎控除や計算方法について

被相続人の財産を受け継ぐ方法として相続と遺贈があります。

遺贈は相続と何が違うのでしょうか、また遺贈にかかる税金は?今回は遺贈に特化してご紹介いたします。

1. 遺贈と相続の違い

遺贈も相続も被相続人の財産を譲り受ける行為であることは同じですが、対象や手続きなどに違いがあります。

1-1.遺贈とは

遺贈とは、被相続人が遺言によって相続人や相続人以外の人に財産を譲り渡すことをいい、相続税の対象になります。

遺贈により財産を譲り渡す人を遺贈者、譲り受ける人のことを受遺者といい、遺言により個人、法人問わず誰でも指定することができます。

似ている行為に贈与がありますが、これは生前に行われます。遺贈は遺贈者の死後に遺言書によって行われるところに違いがあります。

1-2.遺贈と相続の違い

遺贈は遺言により相続人以外の人にも相続財産を渡すことができるのに対して、相続は配偶者や子供など被相続人に近い関係の人から順に自動的に起こるものであり、対象は相続人に限られます。

また通常の相続では相続人全員で相続財産のすべてを受け継ぐことになりますが、遺贈では受遺者が相続財産の全部または一部、など指定された財産を受け継ぎます。

遺贈と相続の大きな違いは、相続は、法定相続人でなければできませんが、遺贈は遺言書を遺すことで相続人以外の第三者に対してもできることにあります。

1-3.遺贈の種類

遺贈には包括遺贈と特定遺贈の2種類の方法があります。

包括遺贈

包括遺贈とは、「Aに相続財産の2分の1を遺贈する。」というように、全部または一定割合を指定する方法です。相続財産を包括的に指定されており、相続に近いイメージを持たれると良いかと思います。

包括遺贈の場合には受遺者は相続人と同じく、マイナスの相続財産(負債)も譲り受けなければなりません

例えば、被相続人の相続財産がプラス財産8,000万円とマイナス財産1億円であった場合、先ほどのAではプラス財産4,000万円とマイナス財産5,000万円の遺贈を受けることになります。

Aは遺言があったために、正味1,000万円のマイナス財産を突然負うことになってしまいます。

したがって、相続と同様に遺贈の場合にも、相続放棄の選択ができるようになっています。

自分のために包括遺贈があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に包括遺贈の放棄の申述をします。もしも3か月を過ぎてしまうと単純承認を選択したとみなされて、遺言通りに相続財産を譲り受けなくてはならなくなります。

特定遺贈

特定遺贈とは、「Bに○○銀行の定期預金△△の1,000万円を遺贈する。」というように、遺贈する財産自体を指定する方法です。この場合には受遺者は、遺言書に書かれた相続財産のみを譲り受けたら良いので、記載がないマイナス財産については受けずに済みます。

何らかの事情で相続放棄をしたい場合には、包括遺贈とは異なり、家庭裁判所への申述も期限もありません。放棄したい旨を相続人に伝えるだけで完了します。

口頭でも完了しますが、後々のトラブルを避けるために通常は、内容証明郵便で書面を送っておきます。

2. 遺贈にかかる相続税の計算方法

遺贈は相続と同じく相続税がかかります。計算する際も相続と一緒に計算し、流れも同じです。遺贈だからといって別途計算するわけではありません。

ただし遺贈については次のような例外もあります。

2-1.相続税計算の流れ

相続税の計算は次のように流れていきます。

① 課税される相続財産の合計から基礎控除額を差し引く

②  ①を法定相続分で按分して相続税の総額を計算する

③ ②を実際の相続分と受遺分で按分して、各人の相続税を計算する

④  ③から2割加算や各種控除を行い、各人が納めるべき相続税を計算する

2-2.受遺者は法定相続人に含まれない

2-1.①での基礎控除の計算では、法定相続人ではない受遺者は法定相続人の数に含まれません。法定相続人であり受遺者である場合には、もちろん含まれます。

基礎控除額の計算

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

法定相続人が1人、第三者である受遺者が2人の場合の基礎控除額は、

3,000万円 + 600万円 × 1人 =3 ,600万円

となります。

基礎控除は相続税額を左右する大きな控除になりますので、思ったよりも少なかったということにならないようにすることが必要です。

相続財産が基礎控除以内である場合には相続税はかかりません。この場合には、基礎控除の計算に関係していな受遺者にも相続税はかかりません。

2-3.受遺者は法定相続分で按分する際には含まれない

相続税を算出する際にはまず、基礎控除を差し引いた後の課税遺産総額を法定相続分で按分し、それぞれに相続税率を乗じた金額を合計して相続税の総額を計算します。2-1.②の段階です。

この計算の際には法定相続人ではない受遺者は関係しません。

【例】

  • 課税遺産総額(基礎控除後の遺産額):1億円
  • 法定相続人:妻(相続分8,000万円)、長男(相続分1,000万円)
  • 受遺者:友人(相続分1,000万円)

妻:1億円 × 1/2 × 20% - 200万円 = 800万円

長男:1億円 × 1/2 × 20% - 200万円 = 800万円

800万円+800万円=1,600万円

平成27年1月1日以後に相続した場合の相続税の速算表

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7200万円

【出典サイト】No.4155 相続税の税率|国税庁

そして2-1.③の段階では、相続税の総額を実際に取得した割合に応じて各人に振り分ける計算を行います。ここでは遺贈を受けている受遺者も含めて計算します。

妻:1,600万円 × 8,000万円/1億円 = 1,280万円

長男:1,600万円 × 1,000万円/1億円 = 160万円

友人:1,600万円 × 1,000万円/1億円 = 160万円

2-4.受遺者は2割加算になる可能性が高い

相続税の計算には、配偶者と被相続人の1親等の親族以外税額が2割増になる加算制度があります。

被相続人が遺言を残すということは、受遺者は自然の流れでは相続人になれない人である場合が多いでしょうから、2割加算の対象であることが多くなります。

2-2.の例では、友人は配偶者でも1親等の血族でもありませんので2割加算の対象となり、160万円の1.2倍である192万円が納付すべき相続税になります。

【関連記事】相続税の2割加算の対象範囲と計算方法

3.遺贈にかかる相続税以外の税金

遺贈によって不動産を取得した場合には、相続税の他にも不動産取得税と登録免許税がかかります。

3-1.不動産取得税

不動産取得税とは、不動産を購入や贈与などで取得した場合にかかる税金で、「固定資産税評価額×3%※」で計算されます。

相続による不動産取得は、相続人の意思なく発生したものであるため、特例で非課税となっていますが、相続人以外の者が特定遺贈により取得した不動産には不動産取得税がかかります

区分 包括遺贈 特定遺贈
相続人が取得 非課税 非課税
相続人以外が取得 非課税 課税

※標準税率は4%ですが、住宅用の家屋と土地については2021331日まで3%の軽減税率となっています。 

3-2.登録免許税

不動産を取得した場合には名義変更登記を行います。義務ではありませんが、権利を守るためには行う必要があります。

この登記を行う際にかかるのが登録免許税で、固定資産税評価額に税率を乗じて算出されます。

遺贈でも相続でも登記を行う際には登録免許税がかかりますが、遺贈の場合には次の通り税率が異なります。

区分 包括遺贈 特定遺贈
相続人が取得 0.4% 0.4%
相続人以外が取得 2.0% 2.0%

1,000万円の土地の遺贈にかかる登録免許税は、相続人で4万円、相続人以外では20万円となり、相続人と相続人以外で5倍もの差になります。

まとめ

遺贈にかかる相続税の基礎控除を含めた計算方法をご紹介させていただきました。

今回は、わかりやすい事例をもとにご説明させていただきましたが、相続財産や相続人が増え、そのうえ遺贈が絡むとと相続税の計算は、複雑になります。

相続税のご相談は、相続税申告に豊富な経験を持つ税理士にご相談ください。

なお、当上原会計事務所でも、相続税については、節税対策から申告まで豊富な実績を有しております。初回は無料でご相談いただけますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。

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