子供が相続人のときの相続税と相続税対策

相続税法では配偶者や子供が財産を相続する場合に適用できる様々な「特例」があります。

今回は、「子供が財産を相続した時の相続税の控除や特例」についてご紹介します。

1.相続税で子供が受けられる各種控除・特例

相続税の計算では、相続人である子供が受けられる様々な「控除」や「特例」があります。「控除」や「特例」を上手に利用することで相続税を少なくすることができます。

1-1.基礎控除

相続税を計算していく過程で、課税される遺産の総額から差し引くことができる金額のことを基礎控除といいます。

遺産から基礎控除を差し引いた後に金額が残らない場合(遺産 < 基礎控除)には、相続税はかからず、申告の必要もありません。

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相続税法では、基礎控除の他に子供が受けられる可能性がある控除が4つあります。

1-2.未成年者控除

未成年者(20歳未満)が法定相続人になり財産を相続する場合に適用を受けることができる控除を「未成年者控除」と言います。

控除額は「その未成年者が満20歳になるまでの年数1年につき10万円で計算した額」です。

未成年年者の法定相続人が満15歳9ヶ月の場合

満20歳になるまでの年数

満20歳 -15年=5年

未成年者控除額

5年×10万円=50万円

未成年者控除は、特殊な条件は必要なく、利用しやすい控除です。ただし、未成年者が法定相続人であり、財産を相続する場合は、遺産分割協議の際に特別代理人を専任する必要があります。

1-3.障害者控除

「法定相続人が障害者」で財産を相続する場合は「障害者控除」が適用することができ、相続税額を軽減することができます。

障害者かどうかの判断については、通常「精神障害者保健福祉手帳」と「身体障害者手帳」の交付状況で判断します。等級により「一般障害者」か「特別障害者」に分類されます。

【関連記事】相続税の障害者控除とは?計算方法と利用の際のポイントについて

1-4.相次相続控除

相続が発生してから10年の間に次の相続が発生した場合、相続税額から一定の額を控除することができます。

例えば、父の相続が終わった直後に母が亡くなった場合などが該当します。この場合、子供には短期間に相続税の支払いが2回発生することになり、金銭的に重い負担になります。「相次相続」による重い相続税の負担を軽減するために「相次相続控除」があります。「相次相続控除」の算式は、次のとおりです。

A × C / (B  –  A) × D/C ×(10-E)/10 = 各相続人の相次相続控除額

A:今回の被相続人が前の相続の際に課せられた相続税額
B:被相続人が前の相続の時に取得した純資産価額
C:今回の相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得したすべての人の純資産価額の合計額
D:今回のその相続人の純資産価額
E:前の相続から今回の相続までの期間(1年未満切捨て)

「相次相続控除」の算式は、複雑に見えますが、簡単に言うと、「今回亡くなった人が支払った前回の相続税額のうち、前回の相続から今回の相続までの年数と10年の差の割合を控除する」です。

1-5.贈与税額控除

「贈与税」は、相続税を補完する役割の税金です。生前贈与をすることで相続財産額を減らし、相続税の課税を逃れることができないようになっています。

相続が発生する前3年間の贈与について贈与税を支払っている場合は、贈与税と相続税の二重課税を排除するために、その贈与税額を相続税から控除することができます。

例えば、親が子供に財産を贈与し、子供は贈与税の申告納税を行い、その後3年以内に親が亡くなった場合に「贈与税額控除」が適用できます。

ただし、「生前贈与の3年内加算」により「贈与した財産の額」が相続財産に加算されます。結果的に、贈与自体が無かったものとして取扱われることになります。「贈与税額控除」の算式は、次のとおりです。

贈与税額控除額 = 贈与を受けた年分の贈与税額 × 贈与財産の額(※)÷ 贈与を受けた年分の贈与財産の合計額

※ 相続税の課税価格に加算されたもの

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2.生前贈与で子供が受けられる特例

子供が親の財産を「相続する時」以外に「贈与する時」に利用できる特例があります。これからご紹介する「生前贈与の特例」は「生前贈与の3年内加算」に該当しませんので、仮に贈与後に親(贈与者)が亡くなったとしても贈与した財産が相続財産に加算されることはありません。

2-1.結婚・子育て資金の一括贈与

平成27年から開始された制度で、親が子供(20歳から49歳まで)に結婚資金や子育て資金に活用できる金銭を贈与した場合、受贈者1人あたり最大1,000万円までの贈与が非課税になる制度です。「結婚・子育て資金の一括贈与」を利用するためには金融機関に専用口座を開設し、結婚・子育て資金に使ったことが証明できる領収書を金融機関に提出する必要があります。

また、贈与した資金を親(贈与者)が亡くなる前までに使い切れない場合は「相続財産として加算」されます。相続対策としてはあまりメリットがありません。「結婚・子育て資金の一括贈与」制度は、現在のところ令和3年3月31日までが適用期間となっています。(延長される可能性があります。)

2-2.教育資金の一括贈与

親や祖父母が教育資金として子供や孫(30歳未満)に1,500万円までの贈与をした場合に、贈与税が非課税になる制度です。教育資金の対象になる費用とは、学校の入学金、授業料などです。習い事や塾の費用、学校までの定期代などは500万円まで非課税になります。

この制度を利用するためには金融機関に専用口座を開設し、授業料などの領収書を銀行に提出するなど一定の手続きが必要です。

相続税対策に現金を減らす方法としては有効ですが、子供や孫(受贈者)が30歳に達した時点で残高がある場合は通常の贈与税が課税されるため注意が必要です。「教育資金の一括贈与」制度は、現在のところ令和3年3月31日までが適用期間となっています。(延長される可能性があります。)

なお、契約期間中に贈与者が死亡した場合には、その死亡日における拠出額から教育資金支出額を控除した残額のうち、その死亡前3年以内にその贈与者から取得した信託受益権等の価額でこの非課税制度の適用を受けたものに対応する管理残額を、贈与者から相続等により取得したこととされます。

2-3.住宅取得資金等の贈与

マイホームの購入資金として親や祖父母が子供や孫(20歳以上)に金銭を贈与した場合、最大3,000万円までの贈与が非課税になる制度です。新しいマイホームの購入資金が対象になりますので、既に購入しているマイホームの住宅ローン返済にあてる資金は対象外になります。

非課税額については、マイホームの構造(省エネ住宅)や消費税率によって非課税限度額が異なります。

また、「住宅取得資金等の贈与」は「暦年贈与(基礎控除110万円)」と併用して利用することができるため、実質的に最大3,110万円までの贈与を非課税にすることができます。この制度は、現在のところ令和3年12月31日までが適用期間となっています。(延長される可能性があります。)

3.二次相続まで考えて長期配偶者居住権を利用する

「長期配偶者居住権」とは、「配偶者が死亡した場合に、引き続きマイホームに住み続けることができる権利」のことを言い、2020年4月に民法が改正された後に認められる権利です。

「長期配偶者居住権」を利用することにより、その後に発生する二次相続の節税につながります。「長期配偶者居住権」については、こちらの記事でご紹介しています。

【関連記事】配偶者居住権の相続税における評価方法

では、以下の事例を使って、節税対策の具体例を示したいと思います。

事例1.

  • 被相続人: 夫
  • 相続人 :妻、子供1人
  • その後、妻が死亡し子供のみが相続人となる
  • 相続財産:自宅のみ(内訳は以下の通り)
    長期配偶者居住権 7,000万円
    土地建物の所有権部分 8,000万円
    合計 1億5,000万円

3-1.長期配偶者居住権を利用しない二次相続

まず、長期配偶者居住権を利用しない場合の相続税について考えてみます。

一次相続の相続税額

最初の相続(一次相続)では妻が自宅を相続します。配偶者の税額軽減の適用により相続税は発生しません。※配偶者の税額軽減では、1億6,000万円まで非課税になります。

【関連記事】相続税における配偶者の税額軽減|基本から注意点までをご紹介

二次相続の相続税額

二次相続(妻が死亡)では子供が自宅を相続します。その際の相続税額は、次のとおりです。

二次相続の相続税課税価格 自宅1億5,000万円 - 基礎控除3,600万円(3,000万円 + 600万円 × 1人) 1億1,400万円
二次相続の相続税額 1億1,400万円 × 相続税率40% - 控除額1,700万円 2,860万円

3-2.長期配偶者居住権を利用した二次相続

一次相続の相続税額

一次相続では妻が長期配偶者居住権部分7,000万円を相続し、子供が自宅の土地建物部分8,000万円を相続する場合の相続税額は次のようになります。

課税遺産総額 自宅1億5,000万円-基礎控除4,200万円(3,000万円 + 600万円 × 2人) 1億800万円
各相続人の相続税課税価格 1億800万円÷相続人2人 5,400万円
1人あたりの相続税額 5,400万円×相続税率30%-控除額700万円 920万円
相続税総額 920万円×2人 1,840万円

一次相続の相続税納付額

相続税の総額1,840万円 × 長期配偶者居住権部分7,000万円 ÷ 相続財産総額1億5,000万円 = 8,586,600円 0円
8,586,600円 - 配偶者の税額軽減8,586,600円 = 0円
相続税の総額1,840万円 × 土地建物の所有権8,000万円 ÷ 相続財産総額1億5,000万円 9,813,300円
一次相続の納税額 9,813,300円

二次相続の相続税額

二次相続では妻の死亡により、妻が一次相続で相続した「長期配偶者居住権」が消滅することになるため相続税の申告は必要ありません

①の相続税額合計2,860万円 > ②の相続税額合計9,813,300円

①と②を比較した場合、配偶者の税額軽減を利用して二次相続対策を行うよりも、「長期配偶者居住権」を利用して二次相続対策を行った方が相続税の負担が少なくなります。

家族構成や相続財産の種類によって相続税額の負担は、異なってきます。相続税額の試算を行いたい方は、税理士に相談することをおすすめします。

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