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マンションの相続税評価額の計算方法と節税対策について

自宅や投資用不動産などとしてマンションを所有されている方は年々増加傾向にあり、特に首都圏ではその傾向が強くなっています(※)。

今回は、マンションが相続財産となった時どのような相続税評価計算が行われるのか、また、世間でよく言われているマンション購入による相続税の節税方法について、マンションに特化して詳しくご紹介いたします。

※「首都圏マンション市場動向2019年度(2019年4月~2020年3月)」株式会社不動産研究所

1.マンションの相続税評価方法

一戸建て住宅の場合、建物部分と土地部分が明確に分かれていますので、単純にそれぞれを評価すればよいのですが、マンションの場合はどのように計算するのでしょうか?

最初に、マンションの相続税評価方法についてご紹介いたします。

マンションの相続税評価は、土地と建物に分けて行うことになります。

1-1.マンションの専有部分と共有部分について

マンション特有の用語で、専有部分と共有部分というものがあります。

専有部分とは、購入した部屋のことでその人しか使えない部分のことです。

共有部分とは、エレベーターやエントランスホール、多目的室などマンションの住人で共有して使う部分のことです。

分譲マンションを購入したとき、その部屋のみを取得したと思われるかもしれませんが、実は共有部分も同時に購入しているのです。

1-2.区分所有権と敷地利用権について

専有部分を所有する権利のことを区分所有権土地を所有する権利のことを敷地利用権といいます。

この敷地利用権はマンションの専有部分の各所有者で共有しており、それぞれに持分割合が定められています。持分割合とは、マンション全体に対する専有部分の割合のことで、登記簿謄本や売買契約書に「敷地権の割合」という項目に記載されていますので確認されてみてください。

マンションの相続税評価額は、まずマンション全体の評価額を計算し、それに持分割合を乗じることで専有部分に共有部分を含めた評価額にすることができるようになっています。

1-3.土地の相続税評価額計算

土地の評価は、まずマンションが建っている土地のすべてを路線価方式または倍率方式を使って計算し、それに持分割合を乗じて専有部分に対する土地の評価額にします。

基本的に路線価が設定されている土地については路線価方式、地方などで路線価が設定されていない土地については倍率方式を使用します。

路線価方式

土地全体の評価額 = 路線価 × 地積 × 各種補正率

倍率方式

土地全体の評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率

マンションの専有部分の土地の評価額

専有部分に対する土地の評価額 = 土地全体の評価額 × 持分割合

路線価や倍率は国税庁が毎年公表していますので、次のリンク先よりご確認ください。

【参考サイト】財産評価基準書|国税庁

また、路線価方式、倍率方式についてお知りになりたい場合は、次の記事を是非お読みください。

【関連記事】相続税路線価|相続税の土地評価に使う路線価の調べ方・計算方法

1-4.建物の相続税評価額計算

建物の評価は単純で、固定資産税評価額となります。

建物の固定資産税評価額と先ほどの土地の評価額と合算した金額が、所有している部屋の相続税評価額です。

固定資産税評価額は、毎年春に市区町村役場から届く「固定資産税課税明細書」に記載されています。

記載様式は市区町村によって若干異なりますが、多くの場合、一番左側に「土地」か「家屋」かが記載されています。「家屋」の欄を右に進んでいきますと、「固定資産税課税標準額」があり、ここに記載されている金額が固定資産税評価額であり相続税評価額になります。

1-5.マンションも小規模宅地等の特例の対象

相続税の計算には、土地の評価額を大幅に減額することができる小規模宅地等の特例という制度があります。

ご紹介してまいりました通り、マンションであっても土地を所有していますので小規模宅地等の特例を適用することができます。

特にそのマンションが自宅であった場合には、330㎡まで80%の評価減ができますので、1億円の土地でも相続税がかかるのは2,000万円に対してということになります。

マンションの場合には土地を共有している分、各専有部分当たりの所有面積は小さくなりますので330㎡に到達することはほとんどなく、所有する土地全体に適用を受けることができます。

非常に節税効果の大きい制度ですので、適用要件に合っているかどうかの確認は必ず行うようにされた方が良いかと思います。

なお、小規模宅地等の特例について、詳しくは、次の関連記事をご参照ください。

【関連記事】土地の相続税対策に欠かせない小規模宅地等の特例とは?

2.マンションの相続税評価額計算の具体例

具体的なマンションの評価額を、ケース別に計算してみます。

2-1.親子で相続した場合

親である被相続人が自宅として所有していたマンションの一室を、子が相続した場合です。

事例1.

  • 土地の路線価:20万円
  • 地積:15,000
  • 建物の固定資産税評価額:3,000万円
  • 持分割合:2,000,000分の5,000
  • 子は被相続人と同居しており、相続税の申告期限まで所有し住み続けている

土地の評価額

20万円 × 15,000㎡ = 30億円

30億円 × 5,000/2,000,000 = 750万円

土地部分は小規模宅地等の特例の特定居住用宅地等に該当しますので、80%評価減されます。

750万円 × 80% = 小規模宅地等の特例適用額600万円

750万円 - 600万円 = 150万円

建物の評価額

建物部分の評価額は固定資産税評価額そのままとなりますので、3,000万円です。

マンションの評価額

土地150万円 + 建物3,000万円 = 3,150万円

2-2.賃貸マンションを相続した場合

被相続人が所有している賃貸マンション1棟で貸付事業を行っており、親族がその賃貸マンションを相続した場合です。

事例2.

  • 土地の路線価:50万円
  • 地積:1,000
  • 建物の固定資産税評価額:3億円
  • 親族は貸付事業を引き継いでいる
  • その他小規模宅地等の特例の要件は満たしている

土地の評価額

50万円 × 1,000㎡ = 5億円

土地部分は小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等に該当しますので、200㎡まで50%評価減されます。

5億円 × 200㎡/1,000㎡ × 50% = 5,000万円

5億円 - 5,000万円 = 4億5千万円

建物の評価額

3億円

マンションの評価額

土地4億5千円 + 建物3憶円 = 7億5千万円

2-3.夫婦共有名義で一方が死亡した場合

夫婦共有名義で自宅用マンションの一室を購入した後、夫が死亡しため、夫の持ち分を妻が相続した場合です。

マンションの持分割合に更に夫婦の持ち分が関わってきますので、少々ややこしくなりますが、夫が持っている部分を評価すれば良いだけですので難しくはありません。

事例3.

  • 土地の路線価:100万円
  • 地積:20,000
  • 建物の固定資産税評価額:5,000万円
  • 持分割合1:,000,000分の2,000
  • 夫婦の共有持分割合2分の1ずつ

土地の評価額

30万円 × 20,000㎡ = 60億円

60億円 × 2,000/1,000,000 = 1,200万円

これを夫の持ち分にします。

1,200万円 × 1/2 = 600万円

更に土地部分は小規模宅地等の特例の特定居住用宅地等に該当しますので、80%評価減します。

600万円 × 80% = 小規模宅地等の特例適用額480万円

600万円 - 480万円 = 120万円

建物の評価額

建物部分の評価額は固定資産税評価額5,000万円ですが、これは建物全体の価格でので、夫の持ち分を計算します。

固定資産税は共有名義となっている人それぞれに届くわけではなく、原則として全額が代表者に送付されるようになっていますので注意してください。

5,000万円 × 1/2 = 2,500万円

マンションの評価額

土地120万円 + 建物2,500万円 = 2,620万円

3.マンション購入による相続税対策

マンションへの投資は相続税対策としても有効です。マンションがなぜ相続税対策になるのか、またその対策方法や注意点をご紹介します。

3-1.不動産は現金より相続税評価額が低くなる

土地の評価に使う路線価や固定資産税評価額は、公示価格の7~8割程度になるように設定されています。

また建物の相続税評価額である固定資産税評価額は、建築場所や築年数などによって多少異なりますが、おおよそ時価の5割程度となります。

現金や預金は金額がそのまま相続税評価額となりますので、現金が1憶円あれば1憶円に対して相続税がかかってしまいますが、1億円を使って不動産を購入しておけば、相続税評価額を数千万円下げることができ、相続税節税に繋がります。

3-2.小規模宅地等の特例がある

被相続人が自宅や事業用に使用していた土地には、その評価額が5080%も減額できる小規模宅地等の特例が適用できる場合があります。

いずれ相続が発生した際に特例の適用対象となれるように、適用要件に合わせてマンションを購入されるのも方法の1つです。

3-3.賃貸にすると更に節税になる

購入した不動産を賃貸にした場合には、借地権割合、借家権割合、賃貸割合を考慮して評価額を計算しますので、更に節税となります。

例えば、自用地価額が5,000万円、借地権割合70%、借家権割合30%、賃貸割合100%の土地があったとします。

賃貸にしていない場合には5,000万円ですが賃貸に出すだけで、次の評価額となります。

5,000万円 ×(100% - 70% × 30% × 100%)= 3,950万円

3-4.特にマンションは評価額が低くなりやすい

相続財産を高額にしてしまうのは不動産が多く、中でも土地をどれだけ所有しているかに左右されます。

マンションの一室を購入した場合には、部屋だけではなく持ち分に応じた土地も購入していることになりますが、一戸建てに比べて割り当てられる土地の面積は小さく、評価額も小さくなりますので、その分全体の相続税評価額も抑えることができます。

3-5.中古で売却しやすい

近年ではマンションが好まれる流れが進んでおり、地域によっては建設中のマンションを常に見るほどです。

特に駅近物件や、独身向けマンションなどは需要が高く、一戸建て住宅よりも市場で売りやすい傾向となっています。

3-6.マンション購入による相続税対策のリスク

マンション購入による相続税の軽減効果は確かですが、確実に損をしない不動産投資はありません。

市場価値の下落、賃貸需要の低迷、不動産管理の手間や費用など数々のリスクが表裏一体であることを忘れないでください。

マンションは非常に大きな買い物です。目の前の相続税だけに囚われることなく、数十年先を見据えた計画が重要になります。マンションによる相続税対策を検討される場合には、税理士などの専門家のアドバイスを受けることをおすすめいたします。

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「あんしん相続」には、ご家族の協力、連携はもちろんですが、専門家のサポートも必要になってきます。

例えば、上記のような場合以外にも、下記のように税理士・弁護士・司法書士を含めた総合的なアドバイスが必要になるケースが少なくありません。

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