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相続税の節税方法|不動産や生命保険、贈与を効果的に活用する!

被相続人が生涯をかけて築いた相続財産の額次第で、相続税は数千万円にもなり、配偶者などの親族は、多額の納税義務を負うことになります。

しかし、相続税は節税しやすい税金でもあります。有効な手段を計画的に取れば、数百万円、数千万単位で節税ができ、場合によっては相続税がかからなくすることもできます。

今回は、相続税の代表的な節税方法についてご紹介いたします。

1.生前贈与を使った相続税の節税方法

最初にご紹介するのは、生前に贈与を行っておくことで将来の相続財産を減らし、相続税を節税する方法です。

相続税対策の中では最も取り入れやすい方法で、多くの方が実行しています。

1-1.暦年贈与

暦年贈与とは、毎年11日から1231日までの間に行われた贈与の合計額から、基礎控除110万円を差し引いた残額に対して贈与税が課せられる贈与の方法です。「生前贈与」や「贈与」と表記されていれば、一般に暦年贈与を指しています。

毎年110万円までの贈与であれば、無税で財産を譲り渡すことができ、死亡する何年も前から計画的に繰り返すことで、相続財産を減らすことができます。

基礎控除は受贈者(財産を譲り受ける人)ごとにあり、例えば子供3人に毎年110万円ずつ贈与すると10年で3,300万円もの相続財産を贈与税がかかることなく減らすことが可能です。

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暦年贈与の注意点

生前贈与加算の期間延長

暦年贈与には、相続開始前一定期間内に贈与した額が相続財産に加算され、相続税の課税対象とする「生前贈与加算」があります。

税制改正により、2024年1月1日以降の贈与から、生前贈与加算の期間が3年から7年に延長され、節税のために行った7年分の贈与はなかったものとなってしまいます。これは、実質的な増税です。

ただし、徐々に延長されるため、実際に贈与が7年分加算されるのは、2023年1月以降の相続からとなり、期間延長に対する軽減措置として、延長された4年分の贈与は、総額100万円まで、相続財産には課税されません。

暦年贈与を否定される可能性

毎年同じ金額の贈与を続けており、税務署に最初から贈与の総額を受贈者に移転する定期贈与とされ、暦年贈与を否認されてしまうと、その贈与の総額に一括で贈与税が課せられてしまいます。

贈与税契約書を作成し、毎年の贈与額を少しずつずらしておくといいでしょう。

1-2.相続時精算課税制度

生前贈与の方法には、もう1つ相続時精算課税制度があります。

相続時精算課税制度とは、60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子や孫に対しての贈与で適用を受けるか選択できる制度で、2,500万円の非課税枠があります。

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相続時精算課税制度の注意点

2,500万円の非課税枠を超えてしまうと、超えた部分については一律20%の贈与税がかかります。さらに、相続時精算課税制度は、一度選択してしまうと暦年贈与には移行できません

しかし、前述した税制改正により、相続時精算課税制度にも、暦年贈与と同様の年間110万円の基礎控除が新設されたため、利用しやすくなりました。

1-3.暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらを選択すべきか

暦年贈与と相続時精算課税制度のいずれを選択すべきかは、一概に決めることができません。どちらを使った方が有利になるのかは、贈与期間や贈与額によって異なるからです。

当サイトでは、暦年贈与と相続時精算課税制度との比較計算シミュレーションが可能なほか、以下コラムも掲載しています。

しかし、最もお勧めしたいのは、相続税に精通した税理士への相談です。当事務所では、実際の資産やご家族の状況をお聞きし、実情に即したシミュレーションをすることができます。お気軽にお問い合わせください。

暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらが有利か、比較計算をしてシミュレーションするツールです。 以下フォームに必要項目…[続きを読む]
贈与税の計算方法には、原則的な計算方法である「暦年課税」と届出書を提出することで選択できる「相続時精算課税制度」があ…[続きを読む]

2.贈与税の特例を使った相続税の節税方法

贈与税にも相続税と同様に、様々な特例があり、それらを利用した相続税対策が可能です。

2-1.住宅取得等資金の贈与の特例

父母や祖父母などの直系血族から18歳以上の子や孫へ、マイホームの新築、取得、増改築等に充てるための資金を贈与する場合には、限度額まで贈与税がかからない、「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」が2026年12月31日まで3年間延長されることになりました。

耐震、省エネ、またはバリアフリーの住宅の非課税限度額は1,000万円、それ以外の住宅は、500万円です。

非課税限度額が1,000万円となる住宅の要件についても、以下の改正がなされています。

改正前 改正後
耐震要件 耐震等級2以上または免震建築物 改正なし
省エネ要件 断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上 断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上
バリアフリー要件 高齢者等配慮対策等級3以上 改正なし

2-2.教育資金の一括贈与・結婚子育て資金の一括贈与

教育資金の一括贈与

教育資金の一括贈与は、父母や祖父母などの直系血族が30歳未満の子や孫へ、教育資金を一括して贈与する場合には、最大1,500万円まで贈与税がかからない制度です。

税制改正により、この制度の期限が3年間延長され、2026年3月31日まで利用できるようになりました。

結婚・子育て資金の一括贈与

結婚・子育て資金の一括贈与の仕組みも、基本的には教育資金の一括贈与と同様になります。

20歳以上50歳未満の子や孫へ、結婚や子育てに関する資金を一括して贈与する場合には、最大1,000万円(結婚資金については300万円)まで贈与税かからない制度です。

この制度も、税制改正により期限が延長され、2025年3月31日まで利用可能です。

2-3.贈与税の配偶者控除

通称「おしどり贈与の特例」と呼ばれる制度で、婚姻期間が20年以上の夫婦間で自宅または自宅を購入するための資金の贈与があった場合には、最大2,000万円まで贈与税がかからない制度です。

3. 保険を使った相続税の節税方法

生命保険を使った相続税対策は、節税効果が大きい反面リスクは小さく、納税資金の準備も併せて行うことができます。

3-1.生命保険の非課税枠の活用

被相続人が亡くなると支払われる死亡保険金には、法定相続人1人当たり500万円の相続税非課税枠が設けられており、例えば、法定相続人が4人の場合には2,000万円まで相続税がかかりません。

また死亡保険金は、相続時に現金を一度に手にすることができるため、納税資金の準備としても有効です。

生命保険を節税対策として利用する際の注意点

確実に死亡保険金が出るように、終身保険に加入してください。

あまり高齢になると、保険に加入できない可能性もあります。早めに計画することをお勧めします。

3-2.若年者には生命保険として贈与

受贈者がまだ若年者などで大きな現金を持たせることが心配な場合には、生前贈与した現金で、契約者と保険金受取人を受贈者、被保険者を贈与者とする生命保険金に加入する方法もあります。

現金を生前贈与しても受贈者の手元にはないため無駄遣いを防止することができ、かつ、受贈者が死亡した場合には死亡保険金となって受贈者へ戻ってきます。

受贈者に生命保険として贈与する際の注意点

受贈者がご自分のお金で契約している生命保険になり、死亡保険金には所得税が課されます

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4. 不動産を使った相続税の節税方法

不動産を使った相続税対策は、生前贈与や生命保険に比べて実行へのハードルは大きく上がりますが、節税効果は絶大です。

相続財産が何億もある方向けの方法になります。

4-1.賃貸不動産の建築・購入

土地の相続税評価額は、公示価格の78割程度、建物は時価の5割程度になります。そのため、1億円の現金を不動産に替えると、相続財産の金額を大きく下げることができます。

また、所有する不動産を賃貸マンションやアパートにすれば、その評価に借地権割合、借家権割合、賃貸割合が考慮され、更に評価額は下がります。

賃貸不動産の建築・購入の注意点

賃貸物件は新しいうちは好まれますが、経年劣化とともに空室率が上がっていくのが通常です。そのうえ、修繕費等の経費も増大していきます。

相続税は節税できたけれども、結果的には支出の方が超えていたということにならないように、長期的な計画が重要になります。

4-2.タワーマンションの購入

「タワマン節税」という言葉を聞かれたことはないでしょうか。2015年の相続税の大改正とタワーマンションブームにより、富裕層のタワマン節税は定番となりました。

タワーマンションは通常のマンションよりも土地の共有者が多く、1部屋の評価額に占める割合が低くなります。また、相続税評価額は1階も50階でも評価額は同じですが、時価は雲泥の差となります。

タワーマンションは実際の価値と相続税を計算するうえでの価値に大きな開きがあるため、単に戸建てや通常のマンションを購入するよりも相続税対策の効果が大きくなります。

相続税対策としてタワーマンションを購入する際の注意点

不動産には時価があります。特にタワーマンションは高額なため下落幅が大きく、相続税の節税分を超える価値の下落も十分にあり得ます

また、国税庁の有識者会議では、マンションの相続税評価方法の見直しが行われています。タワーマンション購入による相続税対策をお考えの方は、一度、相続税に強い税理士に相談することをお勧めします。

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4-3.単身者用マンションの購入

独身者や単身赴任者用のワンルームや1LDKマンションは比較的需要が安定しており、相続まで賃貸用として購入しておき、相続後にすぐ売却する方法も選択しやすいです。

1棟ではなく分譲マンションの1室を購入すると、何かと対応がとりやすいかと思います。

相続税対策として単身者用マンションを購入する際の注意点

仕事をしている方向けのマンションであり、購入する際には、立地や利便性が重要になります。

4-4.小規模宅地等の特例の有効活用

小規模宅地等の特例は、土地の評価額を最大で8割減額できる制度として、大きな節税効果があります。例えば、自用地として評価額が5,000万円の土地に8割減額が適用されると、その評価額は1,000万円になるのです。

しかし、相続開始後に、適用要件に該当していないことが分かると、相続税は想定よりも大幅に増えてしまい、。適用要件を生前にしっかり確認し、該当していない場合には適用対象となるように対策を取るようにしなければなりません。

例えば、小規模宅地等の特例の適用には限度面積があり、限度面積内で高額な土地ほど効果が大きくなります。田舎の広い土地にお住まいの方は、都会に引っ越すのも1つの方法のです。

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5.その他の相続税節税方法

効果は小さくなりますが、その他にも次のような節税方法があります。

5-1.養子縁組を利用した節税方法

相続税では、基礎控除額、生命保険金や死亡退職金の非課税枠など法定相続人の数に比例して金額が大きくなる計算があります。

基礎控除=3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

生命保険金・死亡退職金の非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数

したがって、法定相続人が少なければ、養子縁組をすると非課税枠を増やすことができます。

ただし、相続税法上、法定相続人の数に組み込める養子の人数は、実子がいる場合には1人、実子がいない場合には2人が限度と定められています(相続税法15条2項)。

5-2.生前にお墓・仏壇の購入をしておく

相続税法上、「墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」には相続税がかかりません(相続税法12条1項2号)。「墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物」には、相続税がかからないと国税庁のHPにも記載があります*。

生前に現金で購入することで、その分相続財産を減らすことができ、相続税の節税に繋がります。

*【出典】「No.4108 相続税がかからない財産」|国税庁

相続税対策として仏具を購入する際の注意点

仏具であっても金でできているなど、明らかに骨董価値があるものについては相続財産として課税されます。

5-3.盛大な葬式を行う

葬式費用は債務控除として相続財産から差し引くことができます(相続税法13条1項2号)。したがって、大規模なお葬式になるほど相続財産を減らせることになります。

留意すべきポイント

債務は、相続税の計算の際に相続財産から差し引くことはできますが、相続税を直接減らす効果はありません

節税だけのために多額の費用を葬儀にかけるより、相続税を支払うほうが失う現金は少なくなります。

6.相続税節税を成功させるポイント

最後に、相続税対策を成功させる1番大切なポイントは、相続税が得意な税理士に依頼することです。

相続税の実務経験は税理士によって様々で、年間で申告が1件あるかどうかの税理士と、年間数十件の申告をこなしている税理士とでは節税知識に大差があります。

被相続人が生涯かけて築き上げてきた資産は、優秀な税理士と共に適切に守ることをお勧めします。

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「あんしん相続」には、ご家族の協力、連携はもちろんですが、専門家のサポートも必要になってきます。

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