相続税の税務調査とは?

「税務調査」という言葉を聞くと、漠然とした不安を抱かれる方が多いのではないでしょうか。

今回は、相続税の税務調査について詳しくご紹介します。

相続税の税務調査について正しい知識を持っていただくことで、過大な不安は持たなくても大丈夫ということに繋がっていただければと思います。

1.相続税の税務調査とは?

1-1.相続税の税務調査とは?

相続税の税務調査とは、提出した相続税申告書の内容が正しいものであるかどうかを、税務署の職員が調査しに来ることをいいます。申告をしていない場合であっても、本当に申告の必要がなかったのかを調査されます。

税務調査の結果、相続財産の申告漏れや相続税額の計算に誤りなどがあり、納付した税額が不足していた場合には、修正申告を行って相続税の追加分を納めることになります。

1-2.相続税の税務調査の実情

数ある税金の中でも相続税は、税務調査が入る確率が群を抜いて高くなっています。相続税はその性格上、申告漏れが発生する可能性が高く、追徴税も高額になりやすいため、税務署も優先的に調べるからです。
最新の平成30年分(2018年)の調査実績によると、平成30年度に行われた税務調査(平成28年分(2016年分)の申告が中心となります。)では、申告数105,880件(平成28年分)に対して、12,463件の実地調査が行われました。割合にしますと約11%で、法人税の3%、所得税の1%と比較してみると、相続税の税務調査率の高さが分かります。

平成27年(2015年)の税制改正により相続税対象者が増えたことで、現在は10%程度の税務調査率となりましたが、それ以前は倍の20%、5人に1人が税務調査を受けていたのです。

そして調査された12,463件のうち、10,684件、約85%に申告漏れなどによる追徴が発生しています。

【参考サイト】平成30年分 相続税の申告事績の概要|国税庁

1-3.相続税の税務調査が入りやすい時期

相続税の税務調査は、申告後すぐに入る可能性は低いです。

1-2.でご紹介した「平成30年分 相続税の申告事績の概要」に記載されて公表されているように、平成30年での調査は平成28年分が中心となっていますので、申告から1~2年後が基本となっています。

更に、秋が調査のピークとなっています。これは、税務署は毎年7月に大きな人事異動があるため、それが落ち着いてから相続税調査に本腰が入るためと言われています。
よって、税務調査が入りやすいのは申告から1年後または2年後の秋頃ということになります。

1-4.相続税の税務調査対象の決め方

相続税の税務調査率は10%ですが、調査対象となる人はランダムに選ばれているわけではありません。
次のような方は、優先的に調査が入ることが想定されます。

税理士に依頼していない人

相続税計算は複雑ですので、納税者自身が作成した申告書はどうしても誤りがある可能性が高くなります。
相続税申告書には税理士の署名欄がありますので、税理士が関与したかどうかを見分けることは容易です。

富裕層の人

所有している財産が多く、相続税も高額になりやすい富裕層は、申告漏れや意図的な財産隠しをしている可能性が高くなるため、狙われやすい傾向にあります。

無申告の人

税務署は相続税申告が必要になる人については、生前からある程度把握しています。
税務署は相続税申告が必要だと思っているのに、申告がない場合には税務調査で確認することになります。

2.相続税の税務調査

実際に相続税の税務調査が入ることになった場合の流れをご紹介します。

2-1.税務署からの事前連絡

通常の税務調査は任意調査ですので、事前に税務署から顧問税理士に、顧問税理士から納税者に電話連絡があり、予定をすり合わせて調査日を決定します。

2-2.税務調査前に準備すべきこと

税務調査の日は、連絡があってから2週間から2ヶ月程度先になるのが通常です。それまでに次の準備をすることができます。

申告書の見直し

税務調査で相続税の追徴が発生した場合には、追徴税額に対して10%の過少申告加算税がかかりますが、税務調査が入る前に自主的に修正申告を行った場合には5%で済みます。

万が一、申告書にミスがあったとしても、税務調査前に見直しを行っておくことで、加算税を抑えることができます。

税務調査での必要資料の準備

事前に、税務署から準備しておいてほしい資料を指示されている場合には、漏れなく準備しておきましょう。
その他にも次のような資料を手元に置いておくと、調査がスムーズに進みます。

ただし、調査官から見せてほしいと言われてから、求められた資料のみを提供するだけでかまいません。

  • 申告書を作成する際に使用した資料の原本すべて(謄本、不動産の権利書など)
  • 全相続人の預金通帳
  • 全相続人の認印

2-3.調査当日

通常、調査は2日間、調査官2人で行われます。調査時間は午前10時~午後5時までが多く、早い場合には午後3時には終了します。

まず1日目の午前中は、相続の概要を知るための聞き取りの時間となる場合が多いです。その聞き取りを踏まえたうえで、1日目午後と2日目の午前中に調査が行われ、2日目午後または夕方に調査結果の報告となります。

調査官は、基本的にひたすら資料と申告書と見比べて、追徴の元になる事項を探します。
納税者は、聞き取りが終了すれば、その場を離れることができます。ただし、調査官から追加資料の提示のお願いや質問があった際に、すぐに対応できる場所にいた方が良いでしょう。

また顧問税理士がいる場合には、1日目午前の聞き取りと、2日目午後の調査結果報告には同席してもらいましょう。必要に応じで、納税者に代わって回答することができます。

3.相続税の税務調査の対処方法

調査官は、税務調査でどんなことを見て、どんなことを聞いてくるのか、また、それらへの対処法をご紹介します。

3-1.被相続人について

被相続人がどのような人であったのかを詳しく聞かれます。

職種、交友関係、性格、趣味、生活費などを聞き取ることで、収入と支出をある程度推測し、死亡時点で残っていたと思われる預金額や財産額までもが推測されます。

また、被相続人の筆跡と印鑑の確認は必ず行われると思っていてください。これにより名義財産の有無が徹底的に洗われます。

3-2.被相続人の親族について

被相続人の家族や親戚についても、年齢や職業などを聞き取ることで、不相応な財産を所有していないかどうかが分かります。

例えば、20代で預金が何千万円とある場合には、被相続人から生前贈与を受けている可能性があり、贈与税の漏れはないか、生前贈与加算の漏れはないかなど調べられます。

3-3.取引があった金融機関や証券会社

金融資産は不動産と違って評価額が明確であり、調査官が指摘しやすい項目です。
金融機関などが粗品として配っているカレンダーやボールペンなどから取引先を調べ、金融資産の申告漏れを探します。

3-4.貸金庫の確認

銀行の貸金庫、民間会社の貸倉庫の契約がある場合や、蔵を所有している場合など、自宅以外に財産を保管する場所があった場合には、必ず調べられます。

3-5.対処法は正直に答えるのみ

税務調査への対応の大原則は、絶対に嘘をつかないということです。
調査官はありとあらゆる相続税の税務調査を経験してきていますので、嘘をついても必ず見抜かれてしまいますし、悪質な場合には重加算税が課されてしまいます。更に悪質な場合には刑事罰となってしまいます。

聞かれたこと以上のことを話す必要はありませんが、端的かつ誠実に対応することが大切です。

また、通帳や現金などが保管されている場所を見せるように言われた際には、疑いを持たせないためにも基本的には見せた方が良いでしょう。ただし、寝室にあったりなどでどうしても見せたくない場合には、その旨を正直に伝えれましょう。

4.相続税の税務調査で追徴された場合

1.でご紹介しました通り、相続税の税務調査が入った場合には85%の確率で追徴が発生します。

追徴がないことが1番ではありますが、もし追徴となった場合にはどうなるのかご紹介します。

4-1.延滞税が課税される

追徴は、本来納めるべき期日に納めた相続税が少なかったということですので、追加で納める相続税には延滞税として利息が課されます。

税率は、以下の通りとなっています。

納期限の翌日から2月を経過する日まで

原則 年7.3%
平成30年1月1日から令和2年12月31日までの期間 年2.6%
納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以後 原則 年14.6%
平成30年1月1日から令和2年12月31日までの期間 年8.9%

4-2.いずれかの加算税が加算される

延滞税のほかにも、次のいずれかの加算税がかかります。

過少申告加算税

相続税を少なく申告していたことに対する罰金の意味があります。
税率は追徴額と修正申告を行ったタイミングによって細かく分けられています。

追徴税額 修正申告のタイミング
税務調査前 税務調査の事前連絡から調査開始まで 税務調査後
50万円以下の部分 5% 10%
50万円超の部分 10% 15%

無申告加算税

相続税申告の必要があるにもかかわらず、申告自体を行っていなかったことに対する罰金です。

過少申告加算税は追徴税額部分に対してかかりますが、無申告加算税は無申告なので追徴税=相続税全額となります。

税率の別れ方は過少申告加算税と同様です。

相続税額 期限後申告のタイミング
税務調査前 税務調査の事前連絡から調査開始まで 税務調査後
50万円以下の部分 5% 10% 15%
50万円超の部分 15% 20%

重加算税

追徴となった理由が意図的な財産隠しなど悪質な場合に、過少申告加算税または無申告加算税に代わってかかります。

次の通り、税率も非常に高く設定されており、相続税を丸々申告しなかった無申告の方が重たくなっています。

過少申告の場合 35%
無申告の場合 40%

4-3.追徴税が払えない場合

追徴課税は多くの人が予想外に発生することですので、納税資金がないということも考えられます。ただ、追徴税の納付は原則として現金一括であり、納付しないままでいると最終的には財産を差し押さえられてしまいます。

更に、追徴税は既に期限を過ぎている相続税ですので、発生から納付まで延滞税がかかり続けています。
このような泥沼状態にならないための救済制度として、次の制度があります。

  • 換価の猶予申請
    差し押さえられた財産の売却や、新たな差し押さえを最大で1年間分納することができます
  • 納税の猶予期間延長申請
    追徴税の納税を最大で2年分納することができます

これらの猶予期間中の延滞税については、その全部または一部が免除される点も魅力です。

4-4.追徴に不服がある場合

税務調査により受けた追徴の指摘に納得がいかない場合には、指摘を受けた日の翌日から3ヵ月以内に限り、税務署長に対して不服申し立てをすることができます。
そして、この不服申し立てに対する決定内容にも納得できない場合には、国税不服審判所への不服申し立てへ進むことができます。

この場合には、税務署への不服申し立てに対する決定の通知を受けた日の翌日から1ヶ月以内に国税不服審判所へ再審請求を行わなければなりません。

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