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贈与税の無申告はなぜばれる?未納のペナルティは?

「贈与税申告なんて、しなくてもばれないのでは?」と思われる方は多いのではないでしょうか。

自宅で現金500万円を渡したとしても、それが税務署に見えるわけではありませんし、見つかりようはないように思えます。しかし、贈与税の申告漏れや脱税の大半は見つかってしまいます。

税務署はどのように調べて見つけるのでしょうか?見つかった場合のペナルティなども含めてご紹介いたします。

1.贈与税の申告漏れ・脱税がばれる実態

他の税金と同様に、贈与税にも税務調査があります。最新の平成30事務年度を見てみますと、3,732件に実地調査が行われ、そのうち3,549件に申告漏れ等の非違が見つかっています。

特に贈与税では無申告について重点的に調べられており、非違件数のうち82.6%が無申告に関するものとなっています。

平成29年事務年度 平成30年事務年度 対前事業年度比
実地調査件数 3,809件 3,732件 98.0%
申告漏れ等の非違件数 3,565件 3,549件 99.6%
申告漏れ課税価格 189億円 207億円 109.2%
追徴額 57億円 67億円 119.2%
1件当たり実地調査 申告漏れ課税価格(③/➀) 497万円 555万円 111.5%
追徴税額(④/➀) 148万円 181万円 121.6%

【出典】平成30事務年度における相続税の調査等の状況 P6「3 贈与税事案に対する実地調査の状況」より|国税庁

贈与税は高確率で申告漏れ等が発見できる点、税率が高いため多くの追徴課税が得やすい点などから、税務調査官にとって実績が挙げやすい税金であるともいえますので、調査にも自然と力が入ります。

2.税務署に贈与税の申告漏れ・脱税がばれる仕組み

それでは次に、税務署はどのようにして申告漏れや脱税を見つけているのか、具体的にご紹介いたします。

2-1.法定調査

贈与税の税務調査で税務署が最も活用しているのが法定調書です。

法定調書とは、事業者が誰に何の支払いをしたかを記載した書類のことで、税務署への提出が義務となっています。

法定調書には「給与所得の源泉徴収票」や、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」が添付されますので、税務署は容易にお金の流れを調べることができます。

特に贈与税に直結する記載内容としましては、次のものがあります。

  • 保険金の受取
  • 国外への送受金
  • 貴金属の換金

これらは、その取引を行った保険会社、金融機関、貴金属業者などが税務署へ支払調書を提出してその支払いの事実を報告するようになっています。

「黙っていれば見つからないのでは?」どころの話ではなく、税務署にすべて筒抜けだと考えてください。

2-2.税務調査

税務署は法定調書などから疑わしい先を見つけると実地調査を行いますが、相続税の税務調査から見つかることも多くあります。

相続税の調査では、被相続人や相続人の財産の動きが精査されますので、その流れの中で贈与税も合わせて見られています。

2-3.国税総合管理システム

国税総合管理システムとは、2001年に導入された納税者の税金に関する全情報を一括管理するためのシステムです。

全国民それぞれの所得税や固定資産税などの情報が蓄積されており、税務調査対象を絞り込む際にも利用されています。

データでシステム化されていますので簡単に検索することができ、その人の年収や保有している財産などが一瞬で一覧にされていまいます。

3.贈与税の申告漏れ・脱税はなぜばれるのか

それでは次に、申告漏れや脱税はどうやって発覚するのか、具体的にご紹介いたします。

3-1.不動産登記

不動産の持ち主が変わった場合、法務局に登記がされます。

法務局からは税務署に登記情報が流れる仕組みになっています。そこで、例えば、30代のサラリーマンが抵当権の付いていない3,000万円の土地を登記したとなると、その購入資金源はどこなのか調べようという流れになります。

3-2.現金手渡しの贈与

自宅の金庫に置いていた現金を手渡しで贈与した場合には、それを税務署が把握することは非常に困難です。

しかし確実に見つからないと言い切れるものではなく、預金から多額の現金の引き出しがあり行方が分からない場合には、税務署が調査に動く可能性があります。

また、現金の贈与税の申告漏れの大半が見つかるのは、相続税の税務調査が入った時です。贈与者に将来相続税がかかる場合の申告には、特に慎重さが求められます。

3-3.預金の贈与

税務署には国民の銀行口座を調べる権利があり、多額の預金の動きがあった場合には調査のきっかけになりますが、国民11人の預金の動きを常に把握しておくことは、現時点では不可能ですので数百万円程度の動きであれば見つかる可能性は低いかと思います。

しかし将来相続税が発生するような富裕層の方については、税務署も常に動きを追っています。

現金の贈与と同様に、預金の贈与税の申告漏れは、相続税の税務調査時に見つかってしまいます

現金預金の贈与の申告漏れは、故意で悪質な場合が多いため、税務署がまず目をつけるところです。

また、今国会では見送られましたが、銀行口座とマイナンバーを紐づけする制度案が進んでいます。今後、義務化された場合には、贈与税の申告漏れを見つけやすくなりますので、より正しい申告を行うように心掛けなければなりません。

3-4.親からの贈与

親子間での贈与についての申告漏れは、最も疑われやすく、最も見つかりやすいです。

例えば、親に多額の財産の動きがあった場合には、まず子への贈与が考えられますので、子の財産状況が調べられます。

後でご紹介いたしますが、親子間での贈与については各種の非課税制度がありますので、賢く活用することで数千万単位の贈与が非課税にできます。

親子間においては特に不用意な贈与は禁物です。親子間の贈与で贈与税がかかるもの・かからないものについて詳しくは、是非、次の関連記事もご一読いただけますと幸いです。

【関連記事】親子間の贈与にもかかる贈与税と節税方法

3-5.夫婦間の贈与

親子間の贈与の次に疑われ、見つかりやすいのが夫婦間での贈与です。

夫婦にはお互いを扶養する義務がありますので、通常の生活に必要な財産の贈与については元々贈与税がかかりません

また、親子間と同様に非課税制度が設けられていますし、相続税では配偶者の税額軽減の制度もありますので、大きな金額を無税で終えることができます。

ただし、不用意に贈与を行うと、贈与税がかかってしまう可能性も否定できません。

3-6.車の購入資金の贈与

車の購入資金の援助を受けた場合には、現金預金の贈与と同様に即座に見つかる可能性は低いです。

しかし、税務署職員は他の税務調査の際などに近隣の何気ない光景も見ています。一般住宅地に何千万円もの高級車が停まっていると気にならないわけがないですね。

3-7.宝くじの当選金の贈与

宝くじの当選金には所得税はかかりませんが、受け取った現金を贈与した場合には、当然贈与税の対象になります。

税務署は高額当選者には目を光らせていますので、当選金を贈与した場合にはすぐに見つかる可能性が高いです。

3-8.百貨店の名簿

宝石や美術品などには登記がありませんので、誰が何を購入したのかなど分かるはずがないと思われるかもしれませんが、百貨店や宝石店、美術品店などの多くにはお得意様の名簿があります。

税務署にはその名簿を見る権利があり、誰が購入したのかをすぐに把握できます。

そして、その購入者の相続時などに保有していないことが分かると、誰かに贈与したのではないかと調査するのです。

4.贈与税の申告漏れ・脱税がばれたときのペナルティ

贈与税の申告をしていなかった場合、贈与税の額を少なく申告していた場合には、本来納めるべきだった贈与税を納めることはもちろんのこと、罰金として次の税金がかかります。

4-1.延滞税

追加で納めることになった贈与税は、本来納めなければならない期日を過ぎてから納付することになりますので、延滞した日数(申告期限から納めた日まで)に応じた利息として延滞税がかかります。

201411日以後の期間については、原則と特例とを比べて低い割合を使います。

期間 原則 特例(※)
納付期日の翌日から2ヶ月を経過する日まで 7.3% 2.6%
納付期日の翌日から2ヶ月を経過した日以後 14.6% 8.9%

※ 2018年11日から20201231日までの期間

4-2.無申告加算税

贈与税の申告をしなかった場合にかかります。

故意ではなく忘れていたという場合でも、無申告だったという事実は同じですので、無申告加算税の対象になります。

申告をしていたが、贈与税が不足していた場合にはかかりません。

無申告の贈与税額 税務調査前 税務調査の事前連絡から調査開始まで 税務調査後
50万円以下の部分 5% 10% 15%
50万円超の部分 15% 20%

4-3.過少申告加算税

贈与税の申告が過少だった場合にかかります。

申告漏れがあったことに自分で気が付き、速やかに修正申告を行った場合にはかからないのが特徴です。

過少に申告していることに気づかれている場合には、税務署から指摘を受ける前に修正申告を行うことで延滞税のみのペナルティで済みますので、早目のご対応をおすすめいたします。

不足していた贈与税額 税務調査前 税務調査の事前連絡から調査開始まで 税務調査後
不足していた贈与税額と50万円のいずれか多い金額までの部分 なし 5% 10%
不足していた贈与税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分 10% 15%

4-4.重加算税

無申告、過少申告であった理由が、単に忘れていた、間違えてしまったというものではなく、贈与税を逃れるために意図的に申告しなかった、書類の偽装や虚偽の回答をしたなどの悪質なケースでは、無申告加算税や過少申告加算税に代えて重加算税がかかります。

税率は過少申告加算税で35%、無申告加算税で40%と非常に高率となっています。

申告区分 税率
過少申告 35%
無申告 40%

4-5.刑事罰

無申告や過少申告の理由が非常に悪質である場合には、重加算税に加えて刑事罰が科される可能性もあります。中には懲役刑となる場合もあります。

刑事罰まできてしまいますと、人生が大崩れしてしまいます。「ばれないのでは?」と気やすい気持ちは絶対に持たれないようにしてください。

5. 贈与税を非課税にする方法

贈与税も単に税金を徴収するわけではなく、贈与税負担を軽くすることで次世代へ円滑に財産承継を行うことができるように、各種の非課税制度が設けられています。

5-1.暦年贈与

贈与税の基本の課税方式になります。他の非課税制度の適用を特に受けない場合には、この方法により課税されます。

暦年贈与には年間110万円の基礎控除額が設けられていますので、1/1~12/31の贈与の合計額が110万円以下であれば贈与税はかかりませんし、申告の必要もありません。

例えば200万円を贈与したいという場合、2年に分けて贈与すれば贈与税はかからないことになります。

ただし、金額と期間が定められた贈与は「定期贈与」(一定の期間に一定の金額の贈与を行うこと)とみなされてしまい、贈与額の全額に対して贈与税がかかってしまいます。

対策としましては、毎年の支払金額を同額にしないこと、贈与契約書の作成などがあります。

なお、次の関連記事では、暦年贈与の仕組みなどについても解説させていただいております。

【関連記事】贈与税とは?|どんな時にかかる?非課税枠は?わかりやすく解説

5-2.非課税制度の利用

相続時精算課税制度

60歳以上の直系血族(両親や祖父母など)から、20歳以上の子や孫に対する贈与について適用を受けることができる制度で、2,500万円までの贈与であれば贈与税はかかりません。

2,500万円を超えた部分に対しては、一律で20%の贈与税がかかります。

ただし、この制度の適用を受けた贈与額は、贈与者の相続財産に加算させることになり、課税の先送り制度である点にご留意ください。

将来、相続税の心配がない方には非常にメリットがあります。

なお、相続時精算課税については、次の記事で詳しくご説明させていただいております。

【関連記事】相続時精算課税制度とは?|その仕組みメリット・デメリットについて

贈与税の配偶者控除

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、自宅または自宅を購入するための資金の贈与があった場合に適用を受けることができる制度で、2,000万円までの贈与が非課税になります。

暦年贈与との併用ができる制度ですので、暦年贈与の基礎控除110万円と合わせて、最大2,110万円が非課税になります。

住宅取得等資金贈与

直系尊属(両親や祖父母など)からマイホームを新築、取得、増改築するための資金の贈与を受けた場合には、条件に応じて最大3,000万円まで非課税になります。

「親が子のマイホーム資金を出してあげたいけれど、贈与税が心配。」という場合には、是非検討していただきたい制度です。

なお、住宅取得等資金贈与の非課税制度については、是非、次の関連記事もご一読ください。

【関連記事】住宅取得等資金贈与の非課税制度とは|要件から必要書類まで解説

5-3.生活費・教育費としての贈与

親子間、夫婦間、兄弟姉妹間などには扶養義務があり、親が子の生活費や教育費を支払うことは当然ですので、必要であると認められる金額の贈与であれば、いくらであっても非課税となります。

2.贈与税の申告漏れ・脱税はなぜばれるのか」で車の購入資金のお話をさせていただきましたが、例えば夫が妻に買い物や子供の送迎用の普通自動車を購入したとしても、それは通常の生活に必要な費用ですので贈与税はかかりません。

ただし、これが普通自動車ではなく高級外車などであった場合には、通常の生活には有り余るものであることは明確ですので、贈与税の対象になってしまいます。

まとめ

贈与税申告を正しく行わなかった場合、その多くは見つかってしまいます。

税務署の調査方法も時代と共に効率化されており、銀行口座とマイナンバーの紐づけが進んでいる状況です。将来的には紐づけの対象が、すべての財産となるかもしれません。

決して100%が確実に見つかるというわけではありませんが、申告していないという罪悪感を抱えながらの生活、見つかった時のペナルティを考えますと、「申告しない。」という結論には得がないように思います。

贈与税は節税することができますので、まずは税理士にご相談ください。

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「あんしん相続」には、ご家族の協力、連携はもちろんですが、専門家のサポートも必要になってきます。

例えば、上記のような場合以外にも、下記のように税理士・弁護士・司法書士を含めた総合的なアドバイスが必要になるケースが少なくありません。

  • 贈与税の節税をしたい
  • 贈与税の申告の仕方がわからない
  • 知らないうちに贈与税の課税対象となっていないか不安
  • 贈与税の脱税を疑われるのではないかと不安
    など

弊所では税理士・社会保険労務士・行政書士・弁護士でUグループを形成しており、ワンストップで相続手続き全般についてご相談いただけます。

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