遺言

1.遺言とは

遺言とは逝く人が残る人たちに伝えるメッセージですが、法的効果を与える機能もあります。財産を相続させる、遺贈(遺言によって財産を贈与)する、ということで相続人や受遺者に対して被相続人の遺産を分配する効果を果たします。

遺言者は遺言による意思表示で自由に財産を処分することができます。

例えば、自宅は妻に、アパートは長男に、現預金は次男にというように具体的な財産を決めて処分することもできます。また、1/3は妻に、1/3は長男に、1/3は次男にというように割合をもって遺言し財産を処分(包括遺贈)することもできます。また、長男に遺産分割を一任するとか、3年間は遺産分割を行わないとか、自分の財産なのですから当然といえば当然ですね。

もちろんもらった人(受遺者)は遺贈を放棄することもできます。

放棄は遺贈財産全てである必要はなく一部でも構いません。権利関係の込み入った不動産や遠方の山林など相続するのも大変かもしれません。包括遺贈の場合には債務も含め遺贈していますので相続の放棄の検討も必要かもしれません。

遺贈は相続人以外にすることは可能です。

世話になった人遺贈する。身の回りの世話をしてくれた人に財産を遺贈するという話はよく聞きます。ペットのために愛犬の世話をしてくれる人に世話を条件に財産を遺贈する(負担付遺贈)。ペットはいまや家族同様です。障害者の子供のために信託契約を結んで子供の生活を守る。特定障害者扶養信託契約を利用すると6,000万円まで相続税が非課税とされる制度があります。また、法人に遺贈することも可能です。相続税は課されないものの個人譲渡所得税、法人税、不動産取得税などが課されます。また、献体(自分の体を死後医学のために解剖隊として提供する)のための遺言、角膜移植、肝臓移植等の臓器提供のための遺言などもありますが、家族との事前の話し合いも大切だと思います。

このような遺贈ですが、公序良俗に反する遺言は認められません。内縁関係にある女性に対する遺贈などがその例です。不倫相手に遺贈すれば相続人はそのまま認めるわけにはいかないでしょう。ただ、最近は婚姻関係の評価が柔軟になり、婚姻関係が事実上破綻した後に長期にわたって内縁関係となった女性に対する遺贈が認められる場合もあるようです。余談ですが嫡出子と婚外子の相続分、かつては2:1でしたが今は1:1となっています。

2.遺言の重要性

このような遺言ですが、2017年の公証役場のデーターでは約11万件の公正証書遺言が作られたとあり年々増えているとのことです。自筆証書も含めればもっと多くなるでしょう。遺言の重要性が認識され始めていることは非常にいいことだと思われます。

遺言は判断能力のあるうちに専門家に相談しながら公正証書で書くことがポイントですが、その前に遺言があるかないかで相続の仕方に大きな違いがあることを確認したいと思います。

上図からわかるように、遺言がある場合には基本的には遺言通りの遺産分割がなされます。しかし、遺言がない場合には相続人間の分割協議を経なくてはならず、話し合いが纏まらない場合には家庭裁判所の調停に移行するなど相続人間の争いになってしまいます。

遺産分割はその後の相続人の生活に大きな影響を与えます。家族の事、教育資金、住宅ローン、老後の生活を考えれば相続財産は多いに越したことはありません。仲のいい兄弟であってもこれらの事情を考慮すれば「兄弟のこともあるけれど今は頑張る」しかないのです。

それに対し、遺言は被相続人の最後の言葉です。「これを守り兄弟仲良くしてほしい」とあれば、その言葉に多くの相続人は重きを置くことになると思います。「俺の事情もあるけれど親父のいうことだから・・」

と言って相続人間で(多少の不満はあっても)遺言通り分割できれば遺言の効果は絶大であったということになります。

もう一つ、遺言がなかった場合に比べ遺言の効果として相続税申告との関係があります。相続税の申告は相続の開始から10カ月以内となっています。遺言がありながら遺言では不満であるとして遺産分割の協議を行ったが不調に終わったという場合、申告はどうすればいいでしょう。結論から申し上げますと、遺言通りの申告をするということになります。協議が整わないからと言って遺言を無視した申告は許されません。遺言と相違する遺産分割協議を整えるのなら申告期限までということになります。遺言があることによって遺産分けが強制されるという効果があります。

3.遺留分とは

遺言の話になると遺留分を抜きにしては語れません。遺留分とは遺産の一定割合を相続人に保証する制度で、相続人の生活の保証等の観点から極端な処分に一定の歯止めをかけています。各相続人の遺留分は下図のようになっています。

遺留分は直系尊属のみが相続人である場合には被相続人の財産の1/3、それ以外の場合には被相続人の財産の1/2です。兄弟姉妹について遺留分はありません。

 

<例えば>

相続人が配偶者と子(直系卑属)で、遺産総額が5,000万円(不動産)の場合を考えてみますと

遺留分は 妻・・5,000万円×1/4=1,250万円、 子・・5,000万円×1/4=1,250万円

遺言による相続分が 妻・1/4(4,000万円相当)子・・1/4(1,000万円相当)の場合

遺留分侵害額=遺留分1,250万円―受遺額1,000万円=250万円で子は妻に対し請求できます。

遺言を書く場合にはこのように遺留分への配慮が必要です。遺留分への配慮が足りないと、かえって相続争いの原因を作りかねません。遺留分は相続時の財産だけでなく、10年以内に相続人になされた贈与(相続人以外は1年)を加算した金額を含めて計算されることになっていますのでこの点にも注意が必要です。

それと、もう一つ遺留分額の支払は金銭支払いキャッシュでということです。先ほどの例でいえば妻は弟に対して250万円の現金支払いが要求されるということです。相続した不動産があるから不動産で支払うということができません。遺留分侵害額をキャッシュで支払うことは現実的でないことも多いでしょう。相続した不動産を売却して支払うということも出てくるのではないかと思っています。

遺言を書くといっても誰にどの財産を引き継ぐかだけでなく、遺留分のことまで含めると非常に大変です。専門家を活用することをお勧めします。

4.遺言は公正証書で

遺言の作成方法です。遺言には自分ひとりで作ることのできる自筆証書遺言のほかに公証役場で作る公正証書遺言があります。

①自筆証書遺言

自筆証書遺言は遺産目録をワープロで書けるようになり全文自筆である必要はなくなりました。また、法務局で保管してもらえる(2020年7月以降)ようにもなって便利になりました。費用も安くて済みます。ただ、法務局に保管してもらったとしても、自筆証書遺言の内容までチェックしてくれるわけではありません。

遺言者は自筆証書遺言を作成したら信頼できる人にはその旨を伝えておくようにしましょう。もし、家族が遺言の存在を知らず遺言がない相続にしてしまうと遺言者の遺志が無になってしまいます。また、後日遺言が見つかった場合には、遺産分割に影響を与え面倒なことになりかねません。

②公正証書遺言

一方、公正証書遺言は作成に公証人への報酬が生じます。また、公証役場まで出向き、証人を2人準備するなど手数がかかります。しかし、遺言を紛失してしまった場合にも調査してもらえば公証役場に保存されている遺言を確認することができます。また、検認の手続きは不要で有効な遺言として使用することが可能です。

公正証書遺言の大きなメリットの一つは作成の段階で公証人に相談できるということです。公証人は検事や裁判官を歴任した法律のプロが就任しアドバイスもしてくれます。自筆証書遺言では遺言の意思能力の問題から始まって日付、氏名、押印、加除変更方法など多くの問題が生じ、遺留分まで含めた法的問題をクリアする遺言書を自分ひとりで記載するのは荷が重すぎるように思います。

このような観点から、なるべくトラブルの少ない公正証書遺言で作った方がいいとお勧めしています。人生最後の大切な文書であることを考えれば、費用が少しかかったとしても安全で確実な方法がいいでしょう。せっかく自筆で書いた遺言が効力を有しなかったら取り返しがつきません。

5.遺言はお早めに

遺言は15歳以上で意思能力のある人なら誰でも書くことができます。しかし、高齢になり判断能力が衰えてくると遺言を書く能力を疑問視されることが多くなります。認知症と診断されると遺言を書くことができなくなるとされています。ご自身の財産ですから自身で明確な意思表示のできる時に書いておきたいものです。

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